廃トンネルの先

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大学の友人4人組、ユウタ、ケンジ、アキラ、そしてリナは、夏休みの肝試しとして地元で有名な「封印トンネル」に向かった。そのトンネルは廃道になっており、何十年も前に事故で多くの命が失われた場所だったという。

夜中の2時。懐中電灯の灯りだけを頼りに、彼らはトンネルの入口に立っていた。錆びた看板には「危険立入禁止」と書かれていたが、若さゆえの好奇心がその警告を無視させた。

「おい、誰が先に行く?」とケンジが笑いながら尋ねる。
「怖いのか?」とユウタが挑発する。
結局、4人は一緒にトンネルの中に入ることにした。

中はひんやりとして湿っぽく、遠くで水滴がポタポタと落ちる音だけが響いていた。進むにつれて異様な匂いが漂い始める。それはまるで腐った肉のような臭いだった。

「これ、本当に大丈夫なの?」とリナが不安そうに呟いた。
「もう少し進んだら引き返そう」とユウタが言った。

突然、アキラが「待って」と声を上げた。「聞こえないか?」
耳を澄ますと、確かに足音のような音が後ろから聞こえてくる。しかし、振り返っても誰もいない。トンネルは真っ暗で、入口の光すら見えなくなっていた。

「冗談だろ……」とケンジが呟いた瞬間、背後から低い声が聞こえた。

「帰れない……」

全員が振り向くと、そこには顔のない何かが立っていた。その”何か”は黒い霧のような形状で、顔も手も曖昧な輪郭しかない。だが、その存在感は紛れもなく異様だった。

「走れ!」ユウタが叫び、全員が一斉に走り出した。だが、どれだけ走ってもトンネルの出口が見えてこない。むしろ、いつの間にかトンネルの中が無限に続いているようだった。

気づくと、ケンジがいなくなっていた。次にリナが消えた。そしてアキラも。

最後に残ったユウタは息を切らしながら、振り返らずに走り続けた。しかし、ふと気がつくと、自分の足音以外の音がしなくなっている。恐る恐る振り返ると、そこには誰もいなかった。

次の日、地元のニュースで「4人組の若者がトンネルで行方不明」という記事が報じられた。だが、不思議なことに、トンネルの奥にカメラを持った少年が1人、放心状態で立っているのが見つかった。

彼はこう呟いていた。

「僕じゃない……僕じゃないんだ……最後に”あれ”が僕の顔を……」

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